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この物語は全てフィクションです。
記名してある場所、人物名、全てにおいて実在のものとは無関係です。
また、この作品は虐待という部分が沢山あります。
覚悟をお持ちの方だけお読みください。

1,―始まりはいつもここから
2,―心に刻まれた傷





+LAST LIFE―始まりはいつもここから



始まりはみな同じ


ただ 何処に生まれるかとか


どんな境遇で生まれるのかが選べないだけ


けど どんな道に進むかは自分しだい


俺は進む 子供のままで
俺は進む 大人に反抗しながら




 冷たい風、当たり前のような風が酷く身に染みる。
 建物から出てきた俺は煙草に火をつけ遠くを見つめた。
 今は一月、ここミュールでは酷いときは−20℃ぐらいになるそうだ。
 当然、外にいるクレイジーな野郎は俺ぐらい。
 しかし、こうして一服しなければやっていけなかった。


 俺は今をきらめくバンドのボーカルとして、世界中の若者たちの憧れの的になっていた。
 今は世界ツアーの真っ最中。
 あと、5時間後には俺はステージの上にいなければいけない。

「ふぅー、あと13ヶ国も回らないといけないのか…」
 さっき、つけたばかりの煙草はもう半分ぐらいになっていた。

「俺も偉くなったよなぁー…」
 ぼそりと言った言葉はただ純白の雪に吸い込まれていった。


 ふと、遠くを見ると人がちらほら出てきた。
 多分、今日のライブを楽しみにしている人たちだろう。
 ボーッとしていると俺は不意に誰かに話し掛けられた。

「あのぉ、LAST LIFEのラスト・オリウェイスさんですか?」
 どうやら、ただのファンらしい。

「ああ…、何か用か?」
 後ろに隠していた色紙とペンを出して、言った。

「あ、あの、サインしてください!私、ラストさんのファンなんです」
 俺は煙草を地面に捨て、色紙とペンを受け取ると手慣れた手付きでサインを書いた。

「はい、書けたよ。これからも応援宜しく」
 ファンの女の子はお辞儀をして嬉しそうに走っていってしまった。
 彼女は遠くにいるツレに何か話しているようだ。多分、俺に会ったと言うことだろう。
 これ以上サインを求められても困るので俺はタバコを踏み消しライブハウスへと戻った。


「俺のファンか…」
 自分の楽屋へ続く通路を歩きながらボソッと言った。
 今はスター、昔はゴミ。
 一杯いるなかの一人。
 どうでもいい存在だったのになぁ。
 そして、楽屋に着くとお決まりのように雑誌の記者がいた。

「こんにちは、今日は貴重な時間を我が雑誌のためにありがとうございます。私は新人の記者でウールと言うものです」
 握手を交わしてお決まりの能書き。

「さて、今日はいくつか質問してもよろしいでしょうか?」
「いいよ。けど、かっこよく書いてね」
「もちろんですよ。そうじゃなくても、あなたは十分かっこいいですよ」
「本当?」
「当たり前ですよ。あなたは世界的スターですからね。こうやって話していると、ファンの方に羨ましがれるんですよ」

 言うまでもないが、記者はこういった質問の前のくだらない談話を好む。
 自分しか聞いてない会話が優越感に浸れるからだろう。
 全く、くだらない。

「えっとでは、本題へ入りましょうか…まず、今回のアルバムについて、批評家達は素晴らしいアルバムだと言っていますが、どう思われますか?」
 記者は机にテープレコーダーを置くと質問のリストらしきものをチラ見しながら質問してくる。  これだから、新人の記者は嫌いだ。

「彼らが言うのだから、いいんじゃないか?君はどう思う?」
「私も素晴らしいアルバムと思いますよ。特に#4の詞は素晴らしいです」
 記者はみな同じ事をいう。媚売りみたいに。

―――――(略)―――――

「…と言うことで、最後の質問です。ラストさんは滅多に過去を語らないクールな方で有名ですが、どんな幼少期を過ごしたのか教えてください。パスしてもかまいませんが…」
 過去か…、俺はゆっくり瞬きをし、組んでいた足を下ろしてゆっくり話し始めた。
「いいよ…、君の雑誌だけに教えてあげる。俺は―――」
 それからの話は殆ど意識が無い状態で口が勝手に喋っていた。



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